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晴明は難しい顔をして、何も無い場所を見ていた。
否。常人には視えないだけで、そこには彼自慢の式神がいる。
「……つまり、その術者は喰われてると言うのか、太陰」
『上手い具合に体を乗っ取られている。臭いや気配は無かったから分からなかったが、雑鬼達が現場を見ていた』
力も弱くただ集まっているだけの雑鬼達は、さぞ恐ろしかっただろう。
しかし今は、そんな事は気にしていられない。
「術者……嫌その鬼は?」
『全力で探してるがまだ分からぬ』
これは面倒だ。
屋敷に閉じ込めている苑衣に接触はしないだろうが、 このままでは危害が及ぶだろう。
あの子の為には、その前に鬼を滅さなければ。
『力及ばぬ相手を使役するからこうなる』
不意に第三者の声だけが参加した。
晴明は苦笑し、月光を浴びる簀子を見た。
「久しいな、勾陣」
『挨拶はよい。話は聞いたぞ。その術者は当然の末路だ』
確かに、式神を使役するとあれば己の力に見合った者を選ばねばならない。
強過ぎては制御できず、今回のように式神が暴走するし、弱過ぎては術者の力に負けて消えてしまう。
相手は神だ。適当な者でなければ自分も神の為にもならないのだ。
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