三話 十二神将

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ここに来て三日経った。 苑衣も落ち着いて来て、金時は物忌休暇も終わって、今日から四天王の警護は無くなる。 綱は朝早くから参内した為、目が覚めた時にはいなかった。 そして恐るべき事に、徳芳の勉強会が幕を開けたのである。 まず食事中から嫌味連発の食べ方講座だ。 やれ口は隠せだの、ガツガツ食べるだなど。 それが終われば、字だ。 今まで使っていたような字では無く、流暢に流れる字に直すのは、骨が折れる。 失敗すれば手を叩かれるから、半日の内だけで真っ赤に腫れてしまった。 おまけに貴族の姫は無暗やたらと外に出てはならないと、簀子にさえ行かせてくれない。 息抜きもなければ集中力等続く筈も無く、何度も失敗するという悪循環が続いた。 昼過ぎ。 この時代は一日二食なので、三食の生活だった苑衣はすでに腹ぺこだった。 休憩を貰い、苑衣は横になる。 「……もうやだ。やりたくなぁい」 「お疲れ様です。午後は琴の稽古です」 百未の励ましに、苑衣は俯せて腕を組むと顎を乗せた。 徳芳が見ればはしたないと怒るだろうが、幸いにも今はいない。 「……貴族のお姫様は、小さい頃からこんな事をしてたんだ」 「身分の良い方々だけです。嫁ぎ先で恥をかくのは良くないですし」 姫の教養が、家の評価になるのだし、それなりに身分がある家は必死だ。 .
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