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ここに来て三日経った。
苑衣も落ち着いて来て、金時は物忌休暇も終わって、今日から四天王の警護は無くなる。
綱は朝早くから参内した為、目が覚めた時にはいなかった。
そして恐るべき事に、徳芳の勉強会が幕を開けたのである。
まず食事中から嫌味連発の食べ方講座だ。
やれ口は隠せだの、ガツガツ食べるだなど。
それが終われば、字だ。
今まで使っていたような字では無く、流暢に流れる字に直すのは、骨が折れる。
失敗すれば手を叩かれるから、半日の内だけで真っ赤に腫れてしまった。
おまけに貴族の姫は無暗やたらと外に出てはならないと、簀子にさえ行かせてくれない。
息抜きもなければ集中力等続く筈も無く、何度も失敗するという悪循環が続いた。
昼過ぎ。
この時代は一日二食なので、三食の生活だった苑衣はすでに腹ぺこだった。
休憩を貰い、苑衣は横になる。
「……もうやだ。やりたくなぁい」
「お疲れ様です。午後は琴の稽古です」
百未の励ましに、苑衣は俯せて腕を組むと顎を乗せた。
徳芳が見ればはしたないと怒るだろうが、幸いにも今はいない。
「……貴族のお姫様は、小さい頃からこんな事をしてたんだ」
「身分の良い方々だけです。嫁ぎ先で恥をかくのは良くないですし」
姫の教養が、家の評価になるのだし、それなりに身分がある家は必死だ。
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