三話 十二神将

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「徳芳さんは、私の事が嫌いなのかな」 何か風当たりがきつい。 百未は苦笑して首を振った。 「殿は今は渡辺を名乗っておりますが、嵯峨源氏の方でして。仁明源氏の源敦様の養子となってから、摂津の渡辺と言う地域に越し、渡辺氏を名乗るようになったのです」 「……嵯峨とか仁明とか、色々あるんだ」 「嵯峨源氏とは贈氏源氏の初めで、第五十二代嵯峨天皇の子孫になります」 沢山の皇子や皇女に源氏姓を贈り、臣籍降下させた。 その源氏姓を持つ者達が、沢山の名を持っているのだが、中でも格別なのは村上源氏だ。 「ふぅん。なら、綱様と頼光様は以外と関係あるんだね」 「大ありです。殿が養子になられた仁明源氏の源敦様は、頼光様の父君源満仲様の娘婿になるのですから」 「ん?……血縁関係は限り無く薄いけど、おじと甥になるの?」 「そういう事になりますね」 それは確かに凄い。 「…………実は、徳芳様は摂津源氏の方で、源姓に誇りをお持ちなんです」 だから、綱の婚約者という事になった苑衣には、しっかりした姫になるようきつく当たっていると。 それを知り、苑衣は起き上がると伸びをした。 「……なら私も頑張らなきゃ。綱様や頼光様の顔に泥を塗らないように」 「あまり根は詰め過ぎず」 それでも自分を見てくれる人は有り難いから、期待には応えたいと苑衣は思った。 .
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