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渡辺家は綱が武家として参内しており、頼光の命で内裏内の警備をしている為、身分はさほど高くない。
苑衣が広いと思っているこの屋敷も、貴族の中では狭いし質素なのだとか。
そんな事を金時に聞かされ、目眩がした。
これで狭いなんて、もっと大きい所を見たらどうなるのだろう。
「あら。何やら騒がしいですね」
確かに、門の辺りが騒がしい。
百未が様子を見に行くと、苑衣も続こうとして、背後から肩を掴まれ止められた。
振り返るが誰もいない。
いや。誰かいるのは確かだ。
晴明配下の十二神将が護衛で憑いているのだから。
「えっと。……白虎か天一?」
そんな名前だった気がする。
『室内には結界を貼っております。出られませぬよう』
最近は会話ならできるようになった。
姿を見る事は無いのだろうが、それが嬉しくて、誰もいない所では応えてくれなくても話しかけている。
ただ名前が覚えられない。
「何があったのかな」
『乞食であろう』
野太い男の声に、視線をずらして部屋の隅を見る。
「乞食」
『どうやら常連らしいな』
雅だと言われるのは表しか見てないからだ。
庶民の暮らしは貧しい物で、地方となれば貧困は深刻化している。
都にも乞食は溢れていた。
『貴族の屋敷に乞いに来るとは、珍しいです事』
『どうやら武家の者であったらしいぞ。一族が破綻し身分を無くした』
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