三話 十二神将

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渡辺家は綱が武家として参内しており、頼光の命で内裏内の警備をしている為、身分はさほど高くない。 苑衣が広いと思っているこの屋敷も、貴族の中では狭いし質素なのだとか。 そんな事を金時に聞かされ、目眩がした。 これで狭いなんて、もっと大きい所を見たらどうなるのだろう。 「あら。何やら騒がしいですね」 確かに、門の辺りが騒がしい。 百未が様子を見に行くと、苑衣も続こうとして、背後から肩を掴まれ止められた。 振り返るが誰もいない。 いや。誰かいるのは確かだ。 晴明配下の十二神将が護衛で憑いているのだから。 「えっと。……白虎か天一?」 そんな名前だった気がする。 『室内には結界を貼っております。出られませぬよう』 最近は会話ならできるようになった。 姿を見る事は無いのだろうが、それが嬉しくて、誰もいない所では応えてくれなくても話しかけている。 ただ名前が覚えられない。 「何があったのかな」 『乞食であろう』 野太い男の声に、視線をずらして部屋の隅を見る。 「乞食」 『どうやら常連らしいな』 雅だと言われるのは表しか見てないからだ。 庶民の暮らしは貧しい物で、地方となれば貧困は深刻化している。 都にも乞食は溢れていた。 『貴族の屋敷に乞いに来るとは、珍しいです事』 『どうやら武家の者であったらしいぞ。一族が破綻し身分を無くした』 .
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