三話 十二神将

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そうこうしている内に、一条戻り橋に差し掛かった。 ただならぬ気配に二人は足を止め、腰の刀に手を伸ばす。 張り詰めたような空気の中、目の前に火柱が立ち仏像の格好をした男が現れる。 綱達四天王は鬼退治に関わる為、人外の物を視る力が備わっている。 その力は強い訳では無く、神将といった神々が姿を見せてくれなくてははっきりと確認できないが。 「……騰蛇か」 構えを解いた二人の前で、男は腕を組む。 その男の陰から、露出度が高い服を着た女が現れる。 その二人を見るなり、綱達は背中に冷や汗を掻いた。 「こ、勾陣も」 「闘将二人がお揃いとは、何かしたか?」 十二神将最強と二番手が現れ、恐ろしくない筈が無い。 四天王筆頭の綱でさえ、どちらも相手にしたくない神将なのだから。 『子童共。お前ら何時まで鬼退治に時間を掛ける』 「いや、しっかりやってますよ」 何時も豪快な季武が、背筋を伸ばして敬語を使う。 主にさえ敬語を使うのを辞めてるのに、この二人の前では使うらしい。 『ふん。やっている事が生温い』 「でもこれしか」 『いい餌がいるだろう』 『いい餌』に心当たりがある綱は、顔を顰め睨むように男を見た。 「あいつを使う気は無い」 そもそも匿っている理由が違う。 彼女を狙っているのは、度重なる誘拐鬼ではないのだ。 .
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