三話 十二神将

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騰蛇が形のいい眉を上げる。 『……貴様、今の状況が分かっているか?』 『姫を狙う鬼は術者を喰ろうた。より力を求め少しでも力を持つ者共を襲っている。奴の目当てはあの姫の持つ魂だ』 「……桜の君の魂?」 『あの魂は清らかだ。魂とは清らかな程、力を持つ』 あの堅牢とも言える守りを打ち壊す為に、鬼は力を求める。 退治しなくてはならない鬼が二人もいるのか。 「……勾陣、騰蛇。お前らは何をしてるか」 重い空気の中、静かに歩いて来る陰陽師に、二人の神将は不味いと言う顔になる。 晴明は、溜め息を吐いた。 「本当にお前らは。綱殿や季武殿にちょっかいを出すでない」 ちょっかい程度で目の前に現れては、心臓に悪い。 『だがな』 「言い訳無用。大体勾陣、お前には術者探しを命じた筈だぞ」 『た、太陰や玄武がやってる』 「良いから役目を果たす。騰蛇も。暇では無いと捜索を断らんかったか」 『ああ。断った』 「なら何をしてるここで。暇なら手伝え」 『断る。そんな面倒な事に付き合えるか』 言い捨て姿を消した騰蛇に、晴明が息を吐いて肩を落とした。 言葉を探す勾陣は、結局諦めて消える。 残された綱達も、言い表せない空気に声を掛けるべきか悩んだ。 .
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