309人が本棚に入れています
本棚に追加
騰蛇が形のいい眉を上げる。
『……貴様、今の状況が分かっているか?』
『姫を狙う鬼は術者を喰ろうた。より力を求め少しでも力を持つ者共を襲っている。奴の目当てはあの姫の持つ魂だ』
「……桜の君の魂?」
『あの魂は清らかだ。魂とは清らかな程、力を持つ』
あの堅牢とも言える守りを打ち壊す為に、鬼は力を求める。
退治しなくてはならない鬼が二人もいるのか。
「……勾陣、騰蛇。お前らは何をしてるか」
重い空気の中、静かに歩いて来る陰陽師に、二人の神将は不味いと言う顔になる。
晴明は、溜め息を吐いた。
「本当にお前らは。綱殿や季武殿にちょっかいを出すでない」
ちょっかい程度で目の前に現れては、心臓に悪い。
『だがな』
「言い訳無用。大体勾陣、お前には術者探しを命じた筈だぞ」
『た、太陰や玄武がやってる』
「良いから役目を果たす。騰蛇も。暇では無いと捜索を断らんかったか」
『ああ。断った』
「なら何をしてるここで。暇なら手伝え」
『断る。そんな面倒な事に付き合えるか』
言い捨て姿を消した騰蛇に、晴明が息を吐いて肩を落とした。
言葉を探す勾陣は、結局諦めて消える。
残された綱達も、言い表せない空気に声を掛けるべきか悩んだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!