三話 十二神将

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「……失礼致しました」 「あ、いや。情報も貰ってたし。なぁ?」 「そうですよ、晴明様」 「何と言えばいいか」 個性的な配下を持てば、主は疲れる。 今度、頼光の肩を揉もうかと、綱と季武は思った。 「綱殿、桜の君はお変わりありませんか」 「あ、はい。神将がいてくれるので助かってます」 彼女が神将に一生懸命話しかけてるのは知っている。 姿が視えないのに、会話で感情を読み取ろうと頑張る姿は、頼光にはたまらなくお気に入りらしい。 綱の言伝で毎日盛り上がる姿は、親馬鹿みたいだ。 「あいつが寂しい思いをしていないのも、晴明様のお蔭です」 それに、晴明は首を振る。 「……桜の君様は、寂しいのを隠してるのではないでしょうか」 「…………」 「まぁ、隠し事は上手いらしいからな」 構わないから夜警に行ってくれと笑った顔を思い出す。 図太いですからと笑いながら、本当は寂しいと訴えているようだった。 あの日、彼女は演技が上手いのだと知った。 本当は寂しいのも我慢してるのかもしれない。 だからって、どうこうしてあげられる訳では無い。 「……綱殿、桜の君を頼みます」 「分かってます。殿にも言われてるし」 複雑そうな顔をした晴明は、結局それ以上は言わずに去って行った。 綱達も残りの夜警を再開する。 歩きながら、綱は夜空に瞬く星を見上げた。 何か元気づけられる物を与えた方がいいのだろうか。 そう考える事自体初めてで、何をあげればいいのか分からない。 それを隣りの男に訊くのは嫌だった。 .
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