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「徳芳ぃ!!」
「はい」
夕餉の支度を命じていた徳芳や、女房達が振り返り目を丸くする。
帰って来たばかりの主と、その腕の中で寝ている許婚を見れば何事かと驚く。
だが流石は徳芳。
気を取り直し綱に向き直る。
「如何されましたか」
「俺がいない間に、誰が来てこいつに会った」
「……は?」
「昼頃に誰か来ただろう」
「…………あ。はい。季武様が帰りに寄られて」
「まだいるな!出て来い!!」
「なぁんでバレるかな」
ぶぅぶぅ文句を言いながら、本当に季武が出て来る。
寝ていたのか、髪はぼさぼさで寝起きだ。
「お前、人の家で酒を飲むな!寛ぐな!」
「えぇ?いーじゃねぇか。俺の家みたいなもんだし」
「俺の家だ!せめて寝るならこいつの部屋に酒を置いてくな!」
そこで、この場にいる全員が苑衣の状態に納得した。
昼に帰った季武は、酒を持って渡辺邸に寄り、神将に話し掛けていた苑衣の前で談笑しながら飲んでいた。
が、酔いが回り眠くなってしまい、空いてる部屋で寝る事にした。
季武に付いて徳芳達女房がいなくなった隙に、残っていた酒を苑衣が飲んだのだろう。
ようは、熱では無く酔ってしまってる訳だ。
神将がいるなら止めてやれよと、金時は胸中で呟いた。
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