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「まぁまぁ、季武さんの事は今始まった事じゃないですし」
「いいや、今回ばかりは物申す!」
ぎゃぁぎゃあとしたやり取りに、徳芳はさっさと夕餉の支度を命じて、空木には白湯を持って来るよう言う。
ここは玄人だと感心してしまった。
「聞いてるのか、季武!!」
「綱しゃまぁ」
苑衣が起き上がり、綱の両頬に両手を当てた。
「怒っちゃいけません……メッ!」
固まった綱に、季武が吹き出す。
流石の四天王筆頭も、酔っ払いの前では形無し。
季武を睨み、綱は溜め息を吐いた。
両腕が塞がっているから、季武を叩けない。
「何なら助けてあげましょうかぁ?」
げらげら笑いながら季武が言うから、対抗心に火が付く。
舌打ちをして、苑衣の額に額を付けた。
予想外の事が起き、笑っていた季武も金時も、徳芳達も固まり様子を見守る。
「……綱しゃま?」
「怒ってる訳じゃない。叱ってるだけだ」
嫌、意味は違えどやってる事は同じだろう。
綱に、苑衣は瞬きながら、分かったと頷いた。
それから季武を見る。
「しゅえたかぁ!悪い事しちゃだめっ!」
酔っ払い程、相手にするのは面倒な物は無い。
急に笑い出す苑衣に、酒を置いて来た事を後悔しても後の祭りだった。
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