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  「何で…何でだよ…」  とめどなく涙が溢れ頬を伝う。  生温い風がカーテンを揺らし、見上げればそこに彼女の姿は無くあるのはぼやけた三日月だけ 「どうして…ゲホ…ゲホ…」  更に涙が頬を伝い、口からは咳と嗚咽が漏れた。  彼女が初めて俺に触れたそこに触れながら  後悔と狂おしい程の愛しさが込み上げる。 「ごめん…ごめん…春(ハル)」  いくら謝っても彼女には届かない。  彼女はもぅ、ここには居ない。 「あぁ!!…うぐっ…っ…」  自分のした事を忘れ、幸せになれると思っていた。  代わり映えのない、だけど幸せな毎日。  彼女に見合う男になったら自分の気持ちを伝え  彼女が俺の名を呼び 『秋(あき)』  微笑んでくれる。  それだけで良かった。  例え触れられなくても、誰にも祝福されなとも  春が俺の隣で笑っていてくれる。  それだけで (春!!) 『あはははは………どうして私がお前の傍で存在し続けたのか、やっと分かったよ。私のするべき事も。』 「何だよ…それ…」 『きっとお前に教える為に、私は存在し続けたんだ。』 (………何だよ…それ) 『さよなら、秋(あき)。』 「うわぁーーーーーーーーー!!!!!!!!!!………春……は…る…」 (どうして…)  いくら叫んでも俺の声は彼女に届かない。  もう…彼女はいない…  だけど…彼女はここに存在した 「はは…」  彼女が初めて触れたそこを  彼女が俺に刻み込んだ証を  あの時の感触を思い出しながら指でなぞる。  涙と共に笑みが零れた。  俺はどこか壊れていのかな?  殺されるかもしれない恐怖より、彼女に触れられた喜びの方が大きかった。  ねぇ…春…  俺は───…  
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