ブレッケルおじさん

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店も閉めて、明日の仕込みや材料を厨房へと運び… 日の短い時期はあっと云う間に暗闇へと変わる頃。 ブレッケルは山から持ってきた茸や猪の肉やら、山菜等…彩り豊かな材料をまな板の上で踊らせながら…鼻歌まじりで、料理を作っている。 ミシェッタはメシャムパイプの煙を身に纏い細い目で窓越しの風景を見ながら黄昏ていた。 そして暫くしてから、 ミシェッタは静かに語り始めた。 「メイスン。実は秘密にしていた事があったんじゃ。いや、秘密と云うより、話すべき事じゃないかもしれないと…わしが勝手に思い込んでいたのかもしれん」 メイスンはミシェッタが風が通り抜ける様な話し方をしたので、ゆっくりとミシェッタに耳を傾けた。 「もう…かれこれ数十年経つじゃろうか。メイスンとほぼ同じぐらいの年頃の男の子がいたんじゃ。」 ミシェッタは窓の方から顔をメイスンに向けず、遠い目をしながら優しく穏やか口調で話を続けた。 「息子の名前はクフェルト。好奇心が強く活発な男の子じゃった。よく近所の子供達ともメイスンが以前居たスラム街の子達ともよく一緒に遊んでは、家に呼んで一緒に夕食を食べていたのぉ。」 ミシェッタは情景を窓の先に映し出しながら、表情を緩ませてた。 「いずれはわしの店を継ぎ、立派なパン屋の3代目として大成してほしいと思っておったのじゃが…」 ミシェッタの話が突然ぷつりと切れて窓の先の目線をメイスンの方に下げて俯いたまま、黙り込んでしまった。 メイスンはミシェッタを見詰め 「ミシェッタおじさん。」 メイスンはミシェッタの話を促して呼び掛けをしたのではなかった。 ミシェッタも、メイスンの想いを汲み取ってゆっくりと頷いた。 そして静かにメシャムパイプに火を点けて暫くの間、煙をモクモクと又、黙々とパイプに縋る様な表情で時間がただ過ぎていった。
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