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山間部のカルティマ地方から冬支度を促す様に冷たい風につられて雪も降ってくる。
そして徐々に南下し、メイスンの住む街まで冷たい風が降りてきて…もう衣替えも間近だ。
スフィーシと離れ、三年。
秋がまた過ぎ去ろうとしている。
かじかむ手をこすりながら、仕込みに必要な材料を店へと運ぶ。
ミシェッタの養子になってからパン作りを学び、スフィーシと共に生きていた時の必死な想いは徐々に薄れてゆくなかで…
毎日、近くの教会でスフィーシが生きている事。また再び会いたいと強く願うが、季節は三度も巡ってしまった。
願いがこれほどまでに、心を虚しくさせる事はない。
願っても、願ってもスフィーシの影さえも見えないのだから…
切なさと寂しさが秋はまた一段と込み上げてくる季節だ。
感傷にも浸る時間もなく、
メイスンはパン作りの工程に取り掛かった。
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