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その夜の夕食。
ミシェッタがメイスンの様子を見て静かに口を開いた。
「メイスン。今日は食欲がないみたいじゃが、どこか体調が悪いのかな?」
メイスンは「はっ」として食器の中にあるスープを一気に飲み干し、再び食器にスープを注いだ。
「大丈夫です。ちょっとパンを力一杯こねすぎで、疲れただけです。」
「ミシェッタおじさんこそ、体調悪かった日が続いたけれど、体調は大丈夫ですか?」
ミシェッタはいつもの様にメシャムパイプの煙をモクモクと漂わせ、
「もう大丈夫じゃ!メイスンに一人で店を任してしまって悪かったのぉ。でも、もうメイスンは一人前のパン職人じゃ。店を任しても安心じゃの」
穏やかな眼でミシェッタはメイスンに語りかけている。
メイスンは言えずにいた。
今日あった出来事。
自分が店で泣いた事。
感情を整理したかった事。
ミシェッタに話せば、整理出来たかもしれない。
でも、話せばミシェッタを責めてしまう事にもなる。
ミシェッタのせいで、スフィーシが居ないのではない。
養子にまでしてくれたミシェッタならスフィーシを大切に守っていた事を人一倍わかっていてくれている。
その優しさゆえに、今日の出来事…スフィーシの事も話せないのだ。
「ミシェッタおじさん。まだ身体に障ると悪いから、今日は早く寝ましょう。」
「メイスン。ありがとう。そうじゃの。明日からまた店に出て頑張れそうじゃよ」
ミシェッタがベッドで眠りに付いた後、メイスンは今までの忙しさで忘れてしまっていた、夜空の星を眺めるために外へ出た。
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