ブレッケルおじさん

2/3
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
朝露が霜へと変わりはじめた日の昼下がり。 店に「ミシェッタはおるか?」と訪ねてきた白く長い髭をこしらえた身体の大きい男の人が、パンに見向きもせずにメイスンに近付いて来た。 パンを買いに来る知らないお客だったので… 「は、はい。今呼んできます。どちら様ですか?」と訊ねると 白い髭の男の人は髭に手を掛け触りながら「ミシェッタの弟、ブレッケルじゃと伝えてくれ」 メイスンはミシェッタを呼び、暫くすると、 「おぉ!!ブレッケル!久しいのぉ。珍しいのぉ。山から下りてくるのはいやはや、もう何年経ったかのぉ~」 ブレッケルもミシェッタの顔を見た途端に互いに抱き合い肩を優しく叩いた。 「兄者!体調が芳しくないと聞き及び、心配になって兄者に会いに来たのじゃ!」 「兄者の体調が早く良くなってほしいと思い、山で生息する茸や猪の肉を持ってきたから、たらふく食べてのぉ!!」 ミシェッタとブレッケルは再会を互いに喜び合っていた。 ミシェッタがメイスンと目が合うと、話を進めた。 「この少年が前に手紙で書いた息子のメイスンじゃ。初めてブレッケルと顔を合わすじゃろう?」 メイスンは紹介された後にお辞儀をして、ブレッケルに目線を送った。 ブレッケルは突然に眉間に皺を寄せ、悲しみに満ちた目で… 「兄者…余計につらくはないかのぉ…」 メイスンは、ブレッケルの言葉の意味が解らなかった。 ミシェッタは静かに相槌を打ち、「いいんじゃよ。メイスンはわしの生きがいじゃ。ブレッケル。メイスンには話しておらぬから、それ以上は話してはならぬ。」 ブレッケルは下に俯き、それ以上は何も言葉を発しなかった。 ミシェッタは穏やかな目で、また静かに話はじめた。 「メイスン達がわしを変えてくれたんじゃ。暗闇に一筋の光を灯してくれたんじゃ。メイスン達の"生きる力"に…。わしの心の奥の痛みを全て消してくれのじゃよ。」 ブレッケルは下に俯きながら「兄者…ぅ、ぅう…それなら良かったのぉ。本当に良かったのぉ…」 大きな身体が揺れて泣く声に、メイスンはまだ本当の家族になっていない様な感覚を覚えた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!