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「はーい、次の人……って、何コレ、超イケメンじゃん!!」
占い師は神秘のベールの向こうから黄色い声を上げた。
固定観念の権化、水晶玉の隣には『千円前払い。クーリングオフは認めません』と書かれた賽銭箱が置いてあった。
姉に視線を送ると、般若の形相で見返してきた。払えということらしい。
『何言ってんだよ、姉ちゃんが勝手に連れてきたんだろうが。俺の小遣いは猫さんのためにあるんだ』
と、目で語りかければ。
『ふっ、愚か者。何故私が貴様如きのために金を払わねばならんのだ。財布なんて元から持って来とらんわ』
と語り返された。
不条理だ。
目でこれほど高度な会話が成立するのも不条理だが、そこは兄弟の絆ということにしておこう。
そんな絆がこの暴君アネゴンガーの間にあるなど虫酸が走るので、やっぱその設定は削除。
俺は渋々財布の紐を開く。後で覚えてやがれ。
「で、何占うの?見たところ悩みがありそうには見えないけど」
「いや、俺はぐてーっとした休日を過ごしたいんだが、姉が無理やり……」
「占い師さん、お願いです。この子性癖が壊滅的に変わっていて。ちゃんと女の子が好きになれるかどうか不安なんです」
弟のことを真摯に悩む姉の演技で、やつは言った。
「変わってるってどんな?年上で人妻が好みだとか?ヤダ、お姉さんどうしよう」
占い師は照れてくねくねと動いているが、とりあえず人妻の時点でお姉さんはあり得ないと思う。
「別に変わってません。ただ全長十センチできゃわいくて毛が飛ばない……」
「フィギアか、フィギアなのか!」
違います、と否定しようとして自分の条件がフィギアに当てはまることに気づいてしまった。
俺の道は二次元の中にしか無いのか?ちょっと憂鬱。
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