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「祐璃…もう下ろして…」
「あ、あぁ。」
優希をおんぶして四階の屋上から一階まで降りた。
「ここまでくれば大丈夫かな。」
俺は優希を安心させるために言ったが実際はこの状況で大丈夫なところはないだろう。それに俺も怖かった。できることなら誰にも見つからないところを探して隠れたかった。退屈から解放される期待をしていたのに今は怖い。
「ねぇ、私たちってホントは慎也のことを全然知らなかったんだね…」
「優希…」
優希はあれは慎也じゃない!って言いたかったのだろう。
「追いついた!」
階段を慎也が駆け足で降りてきた。
「何もなかったか?」
「あぁ。大丈夫だ。」
俺は安心した。慎也が無事だったことと、それ以上に鴉に襲われてもまた慎也が守ってくれるって思ったから…
「そっか。良かった。」
「ねぇ慎也…ホントの慎也ってどっちなの?」
優希は唐突に質問した。
「ホントの俺か?俺は…」
ドン!!バラバラバラ…
慎也が言い終わる前に壁がいきなり壊れた。
「きゃぁ!!」
「うわ!!」
「また来たのか!?」
壁が壊れた時に出てきた土煙が晴れてくるとそこには人影があった。
「やぁ、いきなりでわるいねぇ。さっそくだけど殺し合おうじゃねーか!RABEN EATERさんよ!!」
俺は鴉が襲ってきたことが恐ろしくて逃げることでいっぱいだった。だからRABEN EATERってのが何なのかを疑問に思ったのは随分と先のことだった。
「ちっ!逃げろ!二人とも!」
逃げたかったさ。けど俺も優希も腰が抜けて動けなかったんだ。
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