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月が明るい 月を覆った薄い雲が光を空に反射し、一層大地を明るく照らしだしている それゆえか、まわりの星たちも今宵は光を地上に届けるのを遠慮しているかのようだ 月明かりも届かぬ闇が支配する深い森の中 突然、光が現れユラユラと揺らめきだした そこには小さな、木こり小屋が建っていた 小屋の丁度中央に若い男が座って足元を見つめている まわりには男が寝起きするためだろうか 干し草を積み上げた寝床 木の枝を切るためか、それとも他の何かを・・ 大きなナタが壁に掛かっている カリ・・カリカリ・・ 男の足元から何か音がする 虫だ・・・ 人間の親指程の長さと太さの虫が、枝をカリカリと咬んでいる その枝は・・白い 先が細く尖っている 中程には節がある その節に足を掛け、カリカリと虫が枝を咬んでいる 男が微笑んだ その男の目には狂気が宿っている 揺らめく光に照らしだされるたびに、刃物のように鋭さをましてゆく・・狂気 2週間後、男が村から消えた 生まれたばかりの、双子の姉妹とともに・・ 姉妹には、まだ名前がついていなかった。
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