力と過去

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―13年前の夏 ある王族の宮廷で、争いが起きようとしていた。 「貴方には人を思いやると言う気持ちがないのですか!?」 「黙れッッ!!貴様などに何が分かるんだ!!」 パンッと言う何かを叩く音が部屋に響き渡る。 その音と同時に床に倒れ込んだ黒髪の女。 突如、グイッと顔を掴まれるとその女は無理矢理立たされた。 金の髪の男の青い瞳と、女がもつ紫の瞳が絡み合う。 「貴様にこの世界が救えるとでも言うのか?」 冷たくはっきりとした口調で詰め寄る男。 そんな言葉にも女はキッと睨み付け、ゆっくりと口を開いた。 「貴方とは分かりあえないようですね…」 その言葉を聞いた瞬間男は怒りを露にし、拳を振り上げた。 もう少しで振り下ろされる。 そう思ったとき…バンッと激しい音をたてて扉が開いた。 「やめろッ!!妻に何をしているんだ!!」 一人の男が部屋に入り、男を引き離す。 「何が目的だアジールッ!!」 アジールと呼ばれた金髪の男は突如、ククッと喉を鳴らすように笑った。 「フ、ハハハハッ!!」 「何がおかしいッ!!」 アジールにガッと掴みかかり、笑う相手を睨みあげる。 「ククッ、俺の目的が何か教えて欲しいかサルト…」 睨み付けるサルトを再び鼻で笑うと、アジールは呆れたような表情を見せた。 「俺はお前達みたいなやり方でなく、力でこの世界を変えてやるさ」 男が見せた不敵な笑みは、どこか妖艶な微笑みにも見えた。 「さよならだサルト、そして、ソフィー…」 スゥッとアジールの体が光と共に消えて行く。 「次に会うときは………」 「アジール…貴様!!」 アジールが小さく囁いた後、その姿は部屋から消えた。 最悪な言葉の余韻だけを残して…。
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