力と過去

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眩しい日差しがカーテンの隙間から漏れる。 「ん、……ッ…」 ゆっくりと体を起こしながら目を擦る男の子ゼウス。 「ママ…パパ…?」 ゼウスが感じ取ったのは、いつもと何かが違う宮廷の空気。 小さな体でベッドから降りると、部屋の扉をあけて玄関へ向かった。 「な…~ッ…!!」 「ゃ…さ…ッ!!」 玄関へ続く扉の前で誰かの声が漏れていた。 「ママ…?パパ…?」 ゼウスは扉の隙間から中を覗き込む。 「抵抗しても、無駄だ」 サルトをの腕を掴んでいる金髪の男、アジール。 彼はサルトを見つめ、ニヤリと厭らしく笑った。 「私は手に入れたのだ…多大なる力を!!」 アジールの近くにいた一人の男がソフィーの腕を掴み、サルトから引き離す。 「い、ゃッ!!」 「ソフィーッ!!」 その光景を見ながらアジールは高々と笑った。 「ハハハハハッ!!引き裂かれる愛…いいねぇ!!」 青い瞳が怪しく光る。 その光景を見つめながらゼウスはゆっくりと扉を開いていった。 「サルト、君に最高の絶望をプレゼントしようじゃないか」 カチャリと嫌な金属音が空間に木霊した。 「マ、…マ…」 「ゼウスッ!!来てはダメ!!」 ゆっくりとした歩調でゼウスはソフィーに近づいていく。 「ハハハッ!!プレゼントだサルトッ!!」 「やめろぉぉぉぉッ!!!!」 バンッバンッと、響き渡った大きな音。 目を見開き、ソフィーを見るサルト。 「マ…マ…?」 小さく囁いたゼウスの顔に、ピシャッと飛び散った赤い液体が付いた。 「ゼ、ウ…ッ…」 真っ赤に染まった手を、ゼウスの方へと伸ばす。 その瞬間、再びバンッと言う大きな音が木霊した…。
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