力と過去

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「どうだいサルト、私が贈ったプレゼントは…」 クックックッと喉を鳴らしながら、愉快そうに笑うアジール。 「ソフィー…ソフィー…」 しかし…精神的苦痛が大きすぎたのか、サルトはうわ言のようにただ名前を呟くだけだった。 「滑稽だなぁ…サルト、壊れたのか?」 アジールはゆっくりサルトの顔を覗き込む。 その瞳からは生気も、光さえも感じられなかった。 「…最後まで…面白くない奴だ」 アジールは不満そうに顔を歪ませ、手に持っている銃をサルトの頭に向けた。 「さよならだ、サルト」 「ソフィー…」 一瞬の躊躇もなくアジールは引き金を引いた。 バンッと凄まじい音がまた響き渡る。 その音にゼウスの体はビクッと跳ね、ゆっくりとアジールの方を見た。 「面白くない男め…」 ぐったりと動かなくなったサルトの腕を離し、床に倒れたサルトの体を転がすように蹴りあげた。 ゴロッと鈍い音をたてながらサルトの体は転がり、ゼウスの近くで体は仰向けになった。 「…パ、パ?」 目を見開きながら倒れるサルトをゼウスは見つめた。 「パパ…、…パパ、ッ…」 そっと手を伸ばし、ゼウスはサルトの頭に開いている不自然な穴に触れた。 「パパ、パパ…ッ!!」 そこから流れる温かい液体がゼウスの手を赤く染めてゆく。 その光景を見ながら、アジールはゆっくりとゼウスに近づいた。 「貴様は、まだ小さいな…」 ボソッとそう呟くと男をつれ、玄関の扉を開けた。 「次にあったときに、お前を殺そう…その方が楽しいからな」 外へ出て行くときに光を浴び、ギラッと光ったアジールの瞳はどこか赤く怪しく光っていた。 バタンッと音をたて、扉が閉まる。 「ママァ、パパァ…ッ…」 ゼウスは赤く染まったその家に、涙を流しながら一人たたずむ事しか出来なかった。
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