力と過去

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一人たたずむゼウス。 その時ふと強い風が吹き荒れ、その風は扉を開きゼウスの髪をなびかせた。 するといきなりゼウスの胸がドクンッと大きくそして激しく脈打った。 「…ッ…ママ、パパ…」 涙を流しながら、ゼウスは激しく脈打つ胸を握りしめた。 治まることなく激しく脈打つ胸。 その脈は次第にゼウスの目を眩ませてゆく。 「ゥ…ッ…マ、マ…」 音はどんどん激しくなり、どんどん強くなってゆく。 グルグルと視界は回りだし、父親の姿さえぼやけてしまっている。 「…パ、パッ…」 ギュゥッと物凄い力で胸を締め付けられるような感覚に、ゼウスは息をすることもままならず、ヒュッと小さく弱い呼吸を繰り返す。 「ハ、ァ…ッ…」 息をしようとするが胸がつまり、上手く呼吸ができない。 脳に酸素が回らず、ゆっくりとゼウスの意識さえも蝕んでゆく。 「マ…マ…パ…ッ…」 あまりの息苦しさにゼウスは耐えきれなくなり、何かが切れたようにその場で意識を失った…。 父親に寄り添うように小さな頬を真っ赤に濡らし、綺麗な…そして静かな涙を流しながら…。
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