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目を開けると暗闇の世界が広がっていた。
少し経つと、世界は見知った場所になっていた。
ーーー川神市だ。
ただその川神市はセピア色に染め上げられていた。
空、街並み、人々、全てがセピア色だ。
セピア色と聞いて俺が連想するのは過去だ。
だからこれは俺の過去を投影した夢なのだろう。
これは俺が“私”だった頃の話ーー
「駄目ですよ、あーちゃん。集中してください」
母さんに叱られた。今、私は茶道のお稽古中。
赤い着物で着飾られた私は確かにキャップや大和が言うように女の子みたいだ。
茶道は母さんの趣味で、私もその影響で教えられている。
「遊ぶのが楽しみでそわそわするのはわかりますけど集中してね」
全て母さんにはお見通しのようだ。
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