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「痛いっ!離して~~っ」
ある金曜日の放課後。
同じクラスの男の子に
一緒に帰ろう、と言われ
下駄箱辺りで話しながら一緒に歩いていたら、
いきなり…ほんとに、いきなりだった。
ぐいっと誰かに腕を引っ張られ、
そのままずるずると連れていかれた。
その“誰か“とは…幼なじみの彼だった。
なぜか怒っているみたいで
無言のまま歩いていく彼。
ちなみに、腕が痛い。すごく痛い。
「っねぇ…!痛いってば!」
さっきからそう言ってもまったく聞く様子はなく
ぐんぐんと進んで行く。
そして、ふと目に入ったのは
人気の少ない自転車置き場。
そこに着いた途端
だんっと壁に押し付けられた。
「っ…!もう、なんなのよ!」
「…こっちが聞きたいよ……、
なんなんだよお前。」
「はぁ?なにが?」
「なんで、あいつと仲良く
一緒に帰ってるわけ?なぁ?」
「別に仲良くなんか……
ってか、あたしが誰と一緒に帰ろうが
関係ないじゃん!」
そーだ、そーだ。
別にあんたと一緒に帰る約束を
してるわけでもないし、
ましてや
付き合ってるわけでも…ないし?
なんて考えていると
耳元で彼特有の
甘~い低音ボイスが聞こえた。
「関係なくねぇよ。」
「ちょ、耳元で話すのやめてよ!
馬鹿!無駄にセクシーボイスだし!」
「はっ…馬鹿はお前だろ。」
「はぁ?もう、あたし帰るよ!?」
そう言い彼から逃げようとしたら
突然ぎゅうっと
彼に抱きしめられた。
時間で言えば、ほんの少し。
…でもあたしにとってはすごく長い時間
抱きしめられていたように感じた
離れてから何も言わずにじーっと
見つめてくる彼。
彼の綺麗な瞳に見つめられ、
まるでかなしばりにあってるかのよう。
しばらくして
…カタンとどこかで音がした。
と、同時に口を開く。
「な…なにすんのよ!最低!変態!
女なら誰でも言い訳っ!?」
動揺していたから少し吃りながらも
彼を睨みながらそう言い放てば、
彼は、呆れたような顔をしながら
わざとらしく肩を下ろした。
「なに……」
それを見て、文句を
言ってやろうとしたら……
彼の唇に口を塞がれた。
そして、彼は少し頬を赤らめて
つんと口を尖らせながらこう言った
「気付けよバカ、好きなんだよ。」
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