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木彫りの熊に何か貼られている。紙切れだ。
『君は熊が好きかな。君が熊好きとは思えない』
裕子は紙切れを破り捨て、ベッドに倒れ込む。
カチカチと掛け時計の秒針の音が静かに響く。今までの疲れはそれで忘れる。彼女の唯一の楽しみだ。
携帯のバイブで秒針の音を掻き消す。彼女は勉強机の携帯をベッドから立ち上がり、手に取る。
『君が無視しようとしまいと、明日君は私と会うだろう』
裕子は携帯を投げ捨てる。彼女はトイレへと走り込む。気持ち悪い。
裕子はトイレで吐いていた。メール、電話のことを頭に浮かべるとますます気持ち悪くなる。相談できる母は居ない。だが、今の母は母で有って母でないのだから。
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