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『熱くないかね。裕子君』
後藤は笑みを浮かべながら言う。彼の言う通り体が熱くなってきた。それに体中が痛い。成長痛みたいに。裕子は余りの痛さに立って居られなくなった。体は重くなっていく。足は大きくなる。
「いや、いや」
足からは茶色の毛、獣の毛が生えてきた。彼女は毛を毟るが、毛はますます生える。顔にも。手の爪はもう彼女の好きな熊の物になっている。足の爪も。足の裏、手の平には熊の肉球が。体は熊の体と同じ大きさになっていた。
裕子は涙を流していた。体の変化を止めることは出来ない。彼女は熊と同じ体格となった為、二本足で歩き難くなっている。その足で後藤が映し出されたガラスまで歩く。
「私を……私を戻して」
彼女はガラスをドンドン叩く。彼女の手はすでに熊の手と化していた。顔以外、熊となっている。顔も熊となるのは時間の問題だ。
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