プロローグ

2/2
前へ
/4ページ
次へ
風が吹くとある住宅街。その先には、十字路が走っていた。 その十字路の角を、息を荒げた少年が曲がり、住宅街に入って来た。 少年の年は十数歳。おおよそ、中学一、二年生くらいだろうか。 少年は、忙しなく首を左右前後に振り、時には立ち止まりながら誰かの名前を読んでいる。 どうやら、人を探しているようだ。 と、 それまで走っていた少年が、動きを止めた。 その目の前に少年と年が変わらないくらいの、一人の少女が立っていた。 金色の長髪は後ろでまとめ、ポニーテールにしてあり、優しさの中に強さを秘めたような瞳の色は、碧。スレンダーな体型をしてはいるが、スタイルは悪くなく、年相応な曲線を描いている。 少女が、少年に向けて何か言おうとした。 瞬間、 少女の体を、槍のようなものが二本、貫いた。 「奏!!」 倒れる少女に、少年が手を伸ばした。 「奏!!」 神宮寺影人は、ホテルの一室にあるベッドの上で目を覚ました。 その体は、悪い汗でびっしょりと濡れていた。 「……夢……か」 そう、苦しそうに呟いた後、影人はゆっくりとベッドから起き上がる。 そのまま窓際まで歩いて行き、カーテンを閉めた。 その後、黒色のスーツに着替えた影人は、寝るときに着ていた服を全てゴミ箱に捨て、部屋を後にした。 影人が居なくなった部屋には、扉が閉まる音だけが響いた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加