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風が吹くとある住宅街。その先には、十字路が走っていた。
その十字路の角を、息を荒げた少年が曲がり、住宅街に入って来た。
少年の年は十数歳。おおよそ、中学一、二年生くらいだろうか。
少年は、忙しなく首を左右前後に振り、時には立ち止まりながら誰かの名前を読んでいる。
どうやら、人を探しているようだ。
と、
それまで走っていた少年が、動きを止めた。
その目の前に少年と年が変わらないくらいの、一人の少女が立っていた。
金色の長髪は後ろでまとめ、ポニーテールにしてあり、優しさの中に強さを秘めたような瞳の色は、碧。スレンダーな体型をしてはいるが、スタイルは悪くなく、年相応な曲線を描いている。
少女が、少年に向けて何か言おうとした。
瞬間、
少女の体を、槍のようなものが二本、貫いた。
「奏!!」
倒れる少女に、少年が手を伸ばした。
「奏!!」
神宮寺影人は、ホテルの一室にあるベッドの上で目を覚ました。
その体は、悪い汗でびっしょりと濡れていた。
「……夢……か」
そう、苦しそうに呟いた後、影人はゆっくりとベッドから起き上がる。
そのまま窓際まで歩いて行き、カーテンを閉めた。
その後、黒色のスーツに着替えた影人は、寝るときに着ていた服を全てゴミ箱に捨て、部屋を後にした。
影人が居なくなった部屋には、扉が閉まる音だけが響いた。
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