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pool
時折吹く軟らかい風が濡れている俺の髪と鼻につく塩素の匂いを揺らした。
五月蝿い…
近くの木にとまった蝉がひたすら鳴いている。
そんなに鳴いてどうするのか…
おまえがどんなに鳴いたって世界は何一つ変わらないというのに、何を必死に鳴くのか…
軽い疲労感と冷えた身体にあたる暖かい陽射し、制服の裾を捲くりあげた素足に感じる冷気の心地良さに眠気を覚えながら俺はぼんやりとそんなことを考えていた。
短い一生、おまえがどんなに子孫を残そうと鳴いても世界は何一つ変わらないというのに…
どうしてそんなに鳴くのか…
水面が揺れる度に夏の陽射しがキラキラと反射した。
眩しいくらいに…
「おいっ」
急に声をかけられて俺はゆっくりと振り向いた。
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