月と負け犬

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  あたしは泣いた。泣いて泣いて泣きじゃくった。 もう、嫌だと思いながら。 もう、こんな自分が嫌いだと思いながら。 嗚咽が一段落した時、カーテンを閉めに窓に立った。 都会のネオンは眩しくて、星など見えやしない。 「あ、」 でも、月だけは描き足したかのように、凛と美しかった。 まん丸に濡れた、遠い遠い星。 あたしは遠吠えの様に叫びたい衝動に駆られる。 犬だ。今のあたしは負け犬だ。  
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