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雨で最初は気づかなかったが、血の臭いが鼻を突いた。
これほど匂うとは…かなりの出血だろう。
黒く見える服も、もしかしたら違うのかもしれない。
アタシは応急処置に封癒石(クラティシェプトル)を使い、一時的に出血を止める。
白い優しい光が男を薄く包んだ。
どこを怪我しているのかは後で診るから、とにかく彼の体全体を封癒石(クラティシェプトル)の影響下に置く。
ルナの背に乗せようと男の肩の下に腕を通し、足に力をこめて立ち上がる。
手がヌルっとした。確かめるまでもなく、外套にもべったりと着いているだろう。
帰ったら洗わないとな…
重みで崩れた体勢をタタラを踏んでなおし、既にしゃがみ込んでいるルナになるべく優しく乗せ、持ってきていた毛布で包む。
少々、雨がしみこんだが無いよりはマシだろう。
彼が落ちないように後ろ側に座りなんとか抱え込んで固定する。
封光石(ルクスシェプトル)を鞄に仕舞い、彼女の毛をかじかんだ手でしっかりと握った。
それを合図とうけとったのか、彼女に言葉は要らなかったようで、一声の遠吠えが雨の中にコダマし、ルナは消え行く反響を追うがの如く走り出した。
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