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その後は、ルナがスピードを緩めてくれたお陰で、男を落とさず無事に家まで運ぶことができた。
家に着いたら着いたで、いつのまにか封癒石(クラティシェプトル)の効果が切れていて慌てて魔術をかけ直した。
手当をする時に男の怪我の酷さに驚くこともあったが、応急手当を終えるころには彼の荒かった息も落ち着き、今はスヤスヤと寝息を立てている。
アタシはやっと一息ついた。
男を落ち着いて見てみると、中々に整った顔であることがわかった。
体を拭いたり髪を乾かしただけだが、それだけでも先程の血みどろ状態からは見違えるようだ。
スッとした鼻筋や目元を縁取る睫毛の束、艶やかな長い黒髪も特徴的だろう。
少し目線をずらすと、男の側に寄り添うようにして寝ているルナ。
ふと、彼女が初対面の人間をここまで心配したことがあっただろうか? と、記憶を遡るが全く覚えがない。
ということは、この男はルナの知り合いなのだろうか?
ーーーまぁ、こいつが起きればわかることだな。
アタシは先程からジワジワと襲う眠気に身を任せるべく自室へと向かうことにする。
ここはルナがいるから大丈夫だ。
アタシは自室へ向かうべく部屋を出る。
勿論、照明用の封火石持続装置(フラティマ)を停止してからな。
このときのアタシは、まさかあんなことになるなんて考えもしていなかった。
だって、そうだろ ?
森に死体が増えるのが、正しく言うとその処理とかが面倒で助けに行ったのに…
誰が嬉しくてそれ以上の面倒事に巻き込まれてしまうんだ!!
…あぁ面倒だ。
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