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『目が覚めたのね。』
男は驚き目を見開く。ルナの特殊な『声』を聞いたのは初めてだからだろう。咄嗟に視線を動かし開かれていたドアの方を見ると、熊のように大きな犬。つまりルナが満月色の瞳で彼を見つめていた。
「…っ」
大型犬への驚きで体を起こそうとするが、痛みに息を呑み硬直する。ルナは彼の様子を伺いつつ、少しずつ歩みよる。
『まだ動いちゃだめよ!大丈夫?傷は開いてない?』
男は頭に声が響くという現象にまだ目を白黒していたが、なんとか自力で落ち着いた。
ルナはベッドの脇までより、彼を不安げに見つめる。
『怖がらせてごめんなさい。でも、安心して?私は…ルナよ。貴方に危害は絶対に加えないわ。』
自分を落ち着かせるような優しい声に、彼は少し体の力を抜いた。
ルナの満月色の瞳を見上げると、声と同じ優しさを包んでいた。
「 」
男が口をパクパクと動かす。
僅かな声を拾い、ルナが大きく頷いた。どうやら、声の主がルナだということの確認だったようだ。
『…えぇ、そうよ。今エストレジャを呼んでくるから。少し待っていてね。』
ルナは一瞬瞳を伏せ、言い終わるや否や部屋から出ていく。
男はまた一人になった。
………
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