拾いもの

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パタン 本を閉じる音が広い居間に響いた。 「…また暇になった」 物静かな夕刻。 鮮やかな橙が厚い雲によって隠れているため、少し早いが夜が訪れたかのようだった。 そして、アタシことエストレジャは暇を持て余していた。 本日は昼食を遅くとったこともあり腹も空いてないので、まだ夕飯を作る気もない。 3日前からシトシトと降り続ける雨は外出の気を削ぎ落とし、冬が近くなった為の寒さが体を動かすことを億劫にさせた。 つまりアタシは3日間家に引きこもっているのだ。 (なんか面白い本あったか?) ソファから立ち上がって背伸びをし、書庫に足をむける。 さっき読み終えたのは、世界中の伝承を昔話風にわかりやすくした本で、アタシが住むイトラ王国ではかなりメジャーなもの…だと思ってる。 ちなみに、書庫には歴史書を中心に、薬草学の本やら料理法指南書やら果ては小説まで置いてある。 全て両親が趣味で集めたものばかりだ。 しかし、いつまでも読書ばかりしているのはつまらない。 アタシは本の虫でも読書愛好家でもない。 暇だから目を通す。 それだけ。 ほんと、暇なんだよ今の時期は…
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