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いきなりだが、
アタシ達が住む家は木の上に建っている。
高さにしてだいたい15mぐらいなので、木の幹には階段を取り付けてある。
両親曰わく「かわいいでしょ?」らしいが、不便であることには変わりない。
むしろ、何がかわいいのかよくわからない。
まぁ言いたかったのは、飛び降りるにはそれなりの高さだってことだ。
人間にとっては。
獣であるルナは難なく着地し、バランスを崩したアタシにお構いなしに、矢のように勢いよく森に突っ込んだ。
……危うくルナから落ちかけたことは、言うまでもない。
「状況はっ?」
ゴォーゴォーとルナが風のように木々の間を抜けてゆく中、振り落とされないように気をはりつつも疑問を口にした。
『今なら止血すれば大事には至らないわっ』
早口に返したルナは、前だけを見据え走り続ける。
その様子から捜すことに集中したいようだ。
この雨の中だ。匂いもすぐに薄れてしまうのだろう。
無言になった彼女の背に、しがみつきながらアタシは考える。
この時期に森に入るバカはいったいどんな奴だ。
迷いようがないこの狭い森で、ルナが運ぶことができないほどの怪我を追うなんて…
どれだけ、鈍くさい奴なのだろう。
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