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どれだけ時間が過ぎたのか解らない。
ドサリと音を立てて倒れたそれは、まさに死にかけ、瀕死の状態だった。
「腹...減った...」
それは言った。
男は言った。
少女はそれを見ていたが、ほどなく受け答えるように、
「部隊の基地に来れば、いくらでも食わせてやる。ただし、自分で立って歩いて来るのが条件だ」
男は答えた。しかも元気に。
「マジか!じゃあ案内を頼むーーー」
[む]を言う前に少女は背負っていたM14・グレネードランチャーカスタムを取り、男の背中に向けた。
バアン!ババン!
寂れたビル街にライフルの音がこだまし、銃独特の硝煙と火薬の匂いが辺りに漂った。
3発の5.56mmライフルが撃ち込まれたそれはピクピクと痙攣していた。
男の上にはそれが覆いかぶさって、いかにも重そうに
「のわっ!??ちょ、ちょっとコレ!??早くどけてくれよ!潰れちまうって!」
頑張って出ようとしているものの、なかなか出れない。
少女はめんどくさそうに、ああそうですか、情けない男だねとでも言いたそうな眼で覆いかぶさっていたモノをどけた。
男は出してくれた少女をまるで神のような眼で見たが、それはすぐに風神や雷神を見たような眼に変わり、
「そ、その~、えーと、あ、ありがとう...。俺は魁津千速(かいづちはや)」
千速の[や]の字を言う前に少女は、
「御礼ならいい。私の役目はこいつらの討滅と、あなたのような行き倒れを保護する事だから。木鰭夜宵(きひれやよい)」
微妙にグサリと来る返事をされ、肩を落とす千速。
『ん?木鰭夜宵ってのは名前か?だよな?一応自己紹介はしてくれてたのか。』
と心の中で憶測を飛ばしながら、少女が言う部隊の基地へと向かった。
「私はこいつらモンスターを討滅する部隊、"ハンターズ"の一員なの。基地に戻ればハンターズの仲間達があなたを手当てしてくれるから、そこまで私に着いてきて。離れたら今度は助けないわよ」
光の無い瞳から発するオーラを千速は察し、敬礼をせんとばかりにビシッと背筋を伸ばした。
こうして二人は出会った。
出会ってしまったのだ。
これから何が起きてもおかしくない、この時代の、この時、この瞬間に。
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