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あたしは、生まれてからずっとこの蔵に住んでいる。
この薄暗く埃っぽい蔵があたしの城であり、世界だった。
これまで生きてきて、外の世界を見てみたいと思ったことはない。
この蔵の中では風もなければ敵も少なく、食べるものにも困らない。
そして、それ以上に満足していたのは、蔵の格子窓から見える月の美しさだ。
黄色い月が、あたしとあたしの巣を照らす夜。
月と同じ黄色の警告色であたしの身体がキラキラ輝いて、エサ達がフラフラと寄ってくる。
あたしを輝かせてくれる月。
その美しさがあれば他の世界になんて全く興味はなかった。
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