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「そうだ、今なら桜が満開ですよ!
蜘蛛さんも窓のところからなら見えるはずですよ」
去り際に蝶がそう言い、ユラリユラリと視界から消える。
あーあ、今さらになっておなかすいてきちゃったな。
やっぱり逃がさなきゃよかったかな。
あたしはトボトボと寝床に向かい、ふと足を止める。
折角だからあいつが言ってた桜ってやつを見てみようか。
巣から出て埃の積もった柱や梁を上り、一番高い窓を目指す。
あたしよりも古株の連中が残したボロい糸を避けながらなんとか窓のそばへとたどり着いた。
夜行性のあたしにはもろに浴びた陽光が眩しくてたまらない。
目がくらみそうなのを我慢してゆっくりと外の世界を眺める。
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