《暗雲》

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「もちろん心配です。 けれど、あの方の運命や行動は、あの方が決めるべき事です。 こうなる事を望んだ訳では無いとしても、今の事態もあの方が決めた結果なのですから。 私が指図をするべきでは・・・」 「そうねぇ。」 月白がベルの言葉を遮った。 ペロペロと前足を舐めながら。 「・・・でもアドバイスぐらいしてあげてもいいんじゃない。 知らない仲じゃないんだし。 行っておいでよ。」 「でも、月白様・・・。」 「それとも、合って話すのが辛い? なんなら・・・、」 突如、月白が女性の姿に変化し、ベルに迫り寄った。 緩やかなウェーブのかかった薄灰色の長い髪が、ベルの首筋に触れる。 瑞瑞しい唇が今にもベルの頬に触れそうな距離だ。 口元には微笑を湛えているが、しかし眼は笑っていない。 「あたしが代わってあげようか?」 「い・・・行って来ます。」 完全に気圧された。 納得したとか、脅されたとかいう問題ではなく、後先の事を考える余裕も無く返事をしている。 心中は半泣きである。 ベルは月白から逃げるように数歩後退ると、右の拳を握り締めて胸に当て、深く息を吸った。 そして、そこに屋根など無いみたいに、鈴の響きだけを残し、スルリと家の中へと落ちて行った。
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