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「我々の仲間3人と合流した…… だが、彼等はもう戦えない……」
そう言って有藤は頭を抱えた。
つい数時間前までの冷徹な態度とは違い、弱々しく悩む女性がそこにはいた。
その場にいた全員がどう声をかけるべきか戸惑っていると、龍治が有藤に冷静に話し掛けた。
「戦えないってことはどういうことだ? 怪我とかして満足に動けないってことか?」
龍治の問いに、有藤は目を閉じたまま静かに答えた。
「違う…… 戦意喪失だ……」
そう言うと、有藤は簡単に仲間の状態を話し始めた。
工場を出てから暫くして合流した鈴木、岡本、蓮沼の3人の事。
合流した時点で明らかに様子がおかしかった事。
戻ってくる途中、彼等自身の口からもう戦えないと言われたこと。
説明を終えると、有藤はゆっくりと椅子に向かって歩き出し、座り込む。
力が抜けたような有藤に、龍治はそれ以上話を聞こうとしなかった。
無駄に頭を悩ませて、彼女の戦意まで削ぐわけにはいかないと考えたのだ。
重苦しい沈黙が全員を包み込み、誰1人口を開かぬまま、時間だけが過ぎていく。
その状態から何も変わらないまま、時はやって来た。
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