始まりの鐘

6/7
前へ
/201ページ
次へ
「我々の仲間3人と合流した…… だが、彼等はもう戦えない……」  そう言って有藤は頭を抱えた。  つい数時間前までの冷徹な態度とは違い、弱々しく悩む女性がそこにはいた。  その場にいた全員がどう声をかけるべきか戸惑っていると、龍治が有藤に冷静に話し掛けた。 「戦えないってことはどういうことだ? 怪我とかして満足に動けないってことか?」  龍治の問いに、有藤は目を閉じたまま静かに答えた。 「違う…… 戦意喪失だ……」  そう言うと、有藤は簡単に仲間の状態を話し始めた。  工場を出てから暫くして合流した鈴木、岡本、蓮沼の3人の事。  合流した時点で明らかに様子がおかしかった事。  戻ってくる途中、彼等自身の口からもう戦えないと言われたこと。  説明を終えると、有藤はゆっくりと椅子に向かって歩き出し、座り込む。  力が抜けたような有藤に、龍治はそれ以上話を聞こうとしなかった。  無駄に頭を悩ませて、彼女の戦意まで削ぐわけにはいかないと考えたのだ。  重苦しい沈黙が全員を包み込み、誰1人口を開かぬまま、時間だけが過ぎていく。  その状態から何も変わらないまま、時はやって来た。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加