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泣きつく雨海を見て中山も落ち着きがなくなる。
僅かな距離と言え、この緊迫感と危機感に耐えただけでも十分なのだが。
龍治が溜め息を漏らしながらトミーを見ると、追跡者を睨んでいたトミーと一瞬視線が交差する。
無言の、1秒にも満たないアイコンタクト。
それでも2人は頷き、龍治が雨海を引き離した。
「お前らは後ろ見てな」
中山や雨海に視線を送り、龍治は博之を最後に見るとそう呟いて立ち上がった。
それに合わせるようにトミーも立ち上がると、2人は即時に銃を構え、前方の追跡者目掛けて発砲し始めた。
けたたましく鳴り響く銃声に、雨海は耳を塞ぎ、うずくまる。
それを中山が守るように抱き締めながら、博之と共に市役所の方向を睨んだ。
龍治達が放った銃弾は、追跡者に当たることなく、その体を掠めるように飛んでいく。
「来やがったか!?」
銃声に反応し、2人の追跡者がグレネードランチャーを構え、瓦礫の山へ駆け寄る。
だが、それを阻止しようと更に発砲をし続ける。
銃弾は追跡者の肩を射抜き、足を射抜き、迫る追跡者の動きを止めた。
「頭を狙えっ!!」
「分かってるよ!!」
龍治達が発砲しながら会話をしていると、突然トミーのライフルが小さな音を放ち、発砲を止めてしまった。
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