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5月3日、午前3時30分。
暗く重苦しい闇に包まれた八蔵市全域に、大きな鐘の音が鳴り響いた。
1つ、また1つと、ゆっくりと鳴らされる鐘。
3回鳴り響くと、今度は子供が乱暴に叩くように激しい音が連続して鳴った。
「鐘の音?」
「始まりの合図か?」
「それにしては煩すぎるよ」
鐘の音の余韻が耳に残る中、悠輝や秋人達が口々に喋り始めた。
それを横目に有藤が龍治に視線を向けると、一筋の汗を垂らしながら龍治が真顔で立っていた。
「どうした?」
「ただの始まりの合図じゃない…… G.I.F.Tの戦闘開始の合図だ……」
龍治がそう呟いた直後、全員が腕に装着した無線から声が発せられた。
『これより、第3ミッション開始を宣言する。内容は説明した通り、捕虜の救出だ。我々の守る拠点、6ヵ所から12人全てを救出したまえ……』
いつもの低い男性の声が、静かに始まりを告げ、無線はまた無言になる。
戦いの火蓋は切って落とされた。
博之が呟いたその言葉が、悠輝に僅かの不安を感じさせていた。
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