54人が本棚に入れています
本棚に追加
「戦闘開始の合図って?」
鐘の音が鳴り止み、ざわめくように風が吹き始めた頃。
悠輝が真剣な眼差しで考え込む龍治に話しかけた。
「G.I.F.Tに属する組織だけが使う、一種の鼓舞に似た合図だ…… これから戦いに向かうぞ、気合いを入れろってな……」
悠輝の問いに龍治は一瞬目を向けると、腕を組んで答えた。
その言葉を聞いて悠輝は首をかしげた。
追跡者側は捕虜が助けられるのを全力で阻止すると言っていた。
それなのに戦いに向かうとは、腑に落ちない。
「追跡者は俺達を迎え撃つんじゃないの?」
頭に浮かんだ疑問を素直にぶつける悠輝。
あまりに単純な疑問に龍治は口を開き、唖然としてしまった。
「戦いに向かうって言っても戦いに臨むって言う意味だと思うよ……」
呆れたように博之が言った。
悠輝は拳を左手の平に落とし、成る程と言わんばかりに納得して見せた。
「こんなんで大丈夫かよ……」
克彦が心配そうに言うと、その横で有藤が溜め息を漏らす。
全員の様子に悠輝は恥ずかしそうに頭を掻きながら床に座り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!