始まりの音

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あれから俺は教室へ入り窓際一番後ろの席へ付くと授業開始のチャイムをただジッと待った。 5分前。遅刻ギリギリで教室に入ってくる生徒の姿が見える。 そついは走ってきたのか絶え絶えの息を落ち着かせ、皆に挨拶をすると自分の席に向かった。 「はよー、久君」 まぁ席っていってもこいつの席は俺の斜め向かいなんだがな。 「おう、はよ知哉」 屈託のない笑顔を見せるこいつの名前は進藤 知哉(シンドウ トモヤ) 身長は俺の肩程までしかないがクラスでの人望は暑い。きっと誰にでも話しかける人懐っこい性格が影響しているんだろう。 俺も友達付き合いが得意な方ではないが知哉とは話しやすく高校入学してすぐ仲良くなった。 「久君は学校くるの早いねー」 「いや、お前が遅いだけだろ」 「そうかな?」 「あぁ毎回ギリギリに来やがって、その内ガチで遅刻するぞ」 「大丈夫だよ、僕頑張ってるもん、毎朝全力でダッシュして」 自信満々で何を言うかと思えばとんだお気楽発言を繰り出す。 「ダッシュするくらいなら早起き心掛けろよ、その方が手っ取り早いし疲れなくて済むだろ」 「あ、そっか久君頭いいー」 凄い大発見だ!みたいな反応をして知哉は無邪気に手を叩く。 俺はそれを見て全身から力が抜けていくのを感じた。あぁ… 意味なく和む。こういう奴のこと癒し系っていうのだろうか? 「お前可愛いな」 うりうりと知哉の頭を撫でる。 「ほぇ僕そっち系の趣味は…」 「俺もねぇよ馬鹿野郎」 本気じみた知哉のボケにチョップという名のツッコミを入れる。 そんなこんなやっている内に授業開始のチャイムが鳴った。 いつの間にか俺は瑞稀と喧嘩したことをすっかり忘れていた。
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