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「久則ぃ、今日も目覚ましに来てやったわよ感謝しなさい!」
偉そうな上から目線の声が響く。奴だ。瞬間、もの凄い勢いで俺に向かって突進してきた。
ズガンッ――
緊張の解いた無防備な俺。奴もろとも床に叩き付けられる。
ゴンッ..
「痛ぇ」
頭がくらくらする。
俺は激痛が走る頭を押さえながら上半身を起こした。そして霞む目を細めて確認する。俺の腹にギュッと抱き着く奴の姿を…
茶色い肩下までのツインテールが揺れ、吊り目ながらも柔らかい口元が不気味な笑みを産む。
人に突進しておいて謝る気など更々ない自己中心的な性格。
「何でそんな所で寝てるの?早く起きなさい、学校行くわよ」
「お前なぁ、誰のせいでこんな格好してると思ってんだ!」
堂々と抱き着いているのを忘れて無理難題を押し付けてくる。
「へ?あ…し、知らないわよ、あんたがそこにいただけでしょ」
奴は今の自分の体制に気付き、ハッと顔を赤らめる。が少しして逆切れしたように叫んだ。
「私は悪くないわ」
「だったらすぐ退けろ」
「い、嫌…」
「なんで?」
俺には理解できない。
「居心地がいいからもう少しこのままで居てあげるわ」
朝の陽気のせいかほんのり赤くなった顔をふいと横にそらす。
「はぁ」
奴の傍若無人っぷりは今日も健在のよう。俺はため息を付いた。
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