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敵の分別のつかないオウイはリオルへと爪を向ける。
千草は息をのんだ。
(やばい!)
頭が真っ白で動けなくなった千草の後ろから赤い光が飛んでいった。
光はリオルを包み込んでシャボン玉になると、オウイの攻撃を弾き返す。
千草の後ろで倒れている由鶴が蒼白した顔を上げていた。
由鶴の石が仄かに輝いている。
「…ばっ……か…」
そう毒ついて倒れ込む由鶴を見て千草は涙が浮かんだ。
「あんたのがっ……バカっ!」
ユーロやリオルの事などすっかり忘れて狂ったように由鶴へ駆け寄った。
苦しい癖になんで無茶をする、死んでしまうよ。
雪が……そう、雪に触れるのが良くないんだ。
千草は雪を払い、守るように由鶴を抱き締めた。
「由…鶴ちゃ……ゆ………ちゃあん…」
姉を呼ぶ声が震える。
助けてヒヅメさん、アルさん、手塚さん、隆哉君、お母さん、お父さん。
嗚咽を漏らし、ボロボロと涙する。
その時、何時も側にいてくれる、優しくて強い人の暖かい笑顔が脳裏に浮かんだ。
千里。
「お姉ちゃぁぁぁああぁああ゛あぁ゛ああんっ!!!!」
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