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雪が止んで空に――――ヒビが生じた。
そのヒビから鏡を割ったように世界が崩れ去り、そこから制服を着た人が流れこんでくる。
ユーロを囲む制服集団から外れた一人が、千草達の前に降り立った。
「やれやれ。もう強がりは終いかい?」
「左太夫!」
口元を弓なりにしならせた左太夫は、帽子の縁をちょいとつまんで肩越しに一瞥してきた。
―――――目は笑っていなかったけれど。
「魔女だけを捕らえる空間。徹底しておったから、内側からビヒを入れてくれて助かったわい」
「へ?」
何を言われたのか解らない千草は目を瞬く。
左太夫はふふっと笑った。
「よいよい、時には癇癪も悪くないと言うだけな話じゃ」
益々怪訝そうな顔をして首を傾げる千草に、左太夫はやっと目を笑わせた。
「雪はやんだ。さぁ由鶴殿、治癒に励むぞ」
そう言って左太夫は小瓶に入った液体を取り出した。
一方ユーロは、自身を囲む王の剣にため息をついた。
「見つかってしまいましたねぇ。………まぁあしびよりマシですが」
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