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瞬く間にユーロの左頬を一陣の風が掠めた。
頬から血がピュッと吹き出る。
ヒヅメがにこりとして手刀を構えていた。
「……次は外さないよ?」
ヒヅメの後ろで蛇がどくろを巻いている。
ラクの大蛇だ。
大蛇の視線は一度たりともユーロから反れることなく、ちょろっと舌を出して、彼を食していいラクの合図を待っている。
ユーロは逡巡し、静かに人差し指で由鶴を指差した。
この中で一番脆い者。
「わたくしをここから逃がさなければあの子どもを殺します」
ぴくりと手塚の頬が反応する。
由鶴を診ていた左太夫は声に振り返った。
「無駄じゃよ。儂がおるのが見えぬのか。儂が主の術を弾こう」
「ご冗談でしょうご老人。貴男には無理だ。遅い」
「駄目」
話を聞いていた千草は両手を広げて立ちはだかる。
ユーロは微笑を浮かべて首を傾げた。
「こんな幼い子どもに先を超されて、師団はなーにをしてらっしゃるんでしょうねぇ」
その挑発的な言葉に師団員が殺気立つ。
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