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茶化されて、棺を破られ、逃げられるなどプライドが許されない。
ゴゴゴウと地が音を立てて鳴く。
そんな手塚の目をヒヅメの大きな手のひらが覆った。
「落ち着け手塚。そんな事をしても無駄だ」
幼子を相手するかの如く背中をさすられる。
まさかの扱いに狼狽えた手塚の怒りがすっと冷めると地鳴りがおさまった。
残ったのは虚無感だった。
*
千里は血の気が引いていく音をその耳で聞いた。
動けない、言葉がでない。
悲しいのか嬉しいのか憤りかわからないが勝手に涙が溢れてながれた。
ボロボロに傷つき、泣いて目を赤くした千草。
高熱にうなされ、口元に血の跡を残した由鶴。
「…………ごめんなさい」
リオルが小さく呟くその言葉も聞こえなかった。
身体の力が抜けた千里はゆるゆる座り込み顔を覆った。
もう嫌だ。
こんな姿は見たくない。
この子に魔力なんてなかったら……。
ついに千里は嗚咽を漏らして泣いた。
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