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世界は普通に廻っている――つまり、今日も馬鹿みたいに快晴だということだ。
俺にとっての日常が戻って来た。
と言うのも、普通に動けるようになるまで回復しただけのことなんだけれどもね。
俺――雲野隆也は、つい3週間ほど前にトラックにはねられ生死の境をさ迷うという、災難に見舞われた。
奇跡的に今、このあまりおいしいとは言えないシャバの空気を味わえていることが、生きているという実感をもたらしていた。
「ああ、神様仏様!この排気ガスに汚染されたおいしいとは言い難い空気が吸えていることに感謝いたします!」
最近、こう唱えるのが日課になりつつあることが非常にショックだった。
「……で、君たちはいつ僕の膝と腕を返していただけるのでしょうか?」
ずいずいとパンチパーマがチャームポイントのヤクザもんのように睨みを利かせた顔を彼女たちに近付けるのだが、なぜか危うく唇を奪われるところだった。
俺の唇を奪いかけたアホ女――酒井美沙は、悪びれる様子もなく、むしろ堂々としていた。
そして、隣で愛らしい寝顔をしている俺の妹――雲野柚実は夢の中である。
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