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四方八方、どこをみて闇。
どこまでも続く闇……。
その中を風見大樹は歩いていた。
誰もいないのか。
大樹は寂しくなる。
「また泣いてるの?」
不意に話しかけられた大樹は振り向く。
「ミーナ……」
ミルクコーヒー色をしたウェーブのかかった長髪。
全てを優しく包み込んでくれそうな瞳。
女神というのは彼女のような人をいうのだろう。
「泣いてない」
泣きそうではあった。
「泣いてるとまたイヴにバカにされるわよ」
「だから泣いてない」
大樹はムキになってミーナに言う。
ミーナは「はいはい」と小さい子供をあやすように大樹の頭を撫でる。
「……///」
子供扱いされて腹立たしくはあるが、そんなに悪い気はしない。
今でもわかる。
自分はミーナが大好きなのだと……。
「おーい、ミーナ。なにしとんや?」
遠くの方でミーナを呼ぶ声が聞こえる。
イヴがいた。
「はよ行くで」
「うん」
「ミーナ、ちょっ――」
呼び止めようとする大樹。
しかしミーナは大樹の声などに聞く耳を持たない。
ミーナの目にはイヴしか映ってないのだ。
また一人になる……。
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