例えば、木漏れ日の中とか

　見知らぬ土地、見知らぬ人。新しい家に白紙の地図。ケータイのアドレス帳には、今となっては会いにいくのも一苦労な友人の名前しか載っていない。
僕、近藤国代(こんどう くにしろ)は家庭の事情で、世間で言うところの転校というものを人生で初体験した。十六歳、ちょうど高一と高二の変わり目の時期だ。
　今まで、友人には大して苦労したことはなかった。
しかしそれは、ずっと徒歩圏の学校に通っていたおかげであって、誰かしら、その前からの友達が常に傍にいたというだけだった。実際のところ、僕自身は人付き合いが上手いという訳ではないという事を、転校初日の今日思い知らされた。